中小企業がビジネスカードを作る際、支払い口座には法人口座を指定するようになっています。法人口座の開設の方法と手順、必要書類などを説明します。
ビジネスカードには法人口座が必要
個人の銀行口座は、本人確認書類があればそれほど苦労せずに作れます。それに比べると、法人口座の開設は審査が慎重です。
ここ数年は、法人口座の開設が以前より厳しくなっていると言われています。これは、法人口座が振込詐欺などの犯罪に使われるケースが少なくないからです。特に設立直後の法人口座は犯罪に利用されるケースが多いと言われているとのこと。設立間もない会社の法人口座取得はハードルが高くなっています。
法人口座開設をスムーズにするポイント
法人口座を問題なく開設するためには、いくつかのポイントがあります。
法人口座開設をスムーズにするポイント
- 資本金の額を低くしすぎない
- 事務所を借りる・固定電話を引く
- 事業内容を明確にする
- 本店住所の最寄りの金融機関を選ぶ
資本金の額を低くしすぎない
資本金が少なすぎる場合、口座開設を断られる場合があります。今は資本金1円でも会社が作れますが、それでは経営資金としての力はありません。「怪しい目的で口座を作るのではないか?」と思われてしまう可能性が高くなります。
金融機関に信用される、妥当な額の資本金を用意しましょう。必要な備品、販促費、内装工事費などを計算し、事業を経営する上で説得力のある額を設定します。
事務所を借りる・固定電話を引く
金融機関によっては、事務所の賃貸契約書が必要となる場合があります。バーチャルオフィスなど、事務所の実態がない場合は会社そのものの実態が疑われてしまうかもしれません。なお、固定電話を設置していると所在地が証明できるため、審査に通過しやすくなります。
自宅が事務所として使えない契約になっている、といった理由でバーチャルオフィスにせざるを得ない場合もあります。固定電話も、設立したばかりでは不要という方も多いのではないでしょうか。このような場合は追加資料(会社パンフレット、ホームページ、取引先との契約書など)を用意して、事業実態を説明するようにします。
事業内容を明確にする
定款の事業目的が多すぎて不明瞭だったりすると、金融機関も不審に思います。この場合も、事業実態を証明する資料を提出できるように準備をしておきましょう。資料については、後で詳しく説明します。
本店住所の最寄りの銀行支店を選ぶ
口座開設を申し込む金融機関は、本店住所の最寄りの支店にします。金融機関には支店ごとに担当エリアが設けられており、本店住所から離れたところでは口座開設を断られる場合があります。
法人口座開設に必要な書類
多くの金融機関で必要とされる書類は以下のようになっています。
必要書類
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
- 来店者の本人確認書類(運転免許証、各種健康保険証など)
- 来店者が法人代表権を持たない場合、委任状
- 口座開設依頼書(銀行指定の書類)
金融機関によって必要とされる書類には違いがあります。また、口座開設の審査途中で新たな書類提出を求められる場合もあります。
金融機関により必要とされるもの
- 法人の印鑑
- 法人の印鑑登録証明書
- 法人番号指定通知書
- 定款
- 代表者の情報確認(氏名、住所、生年月日)
- (必要に応じ)事業内容が分かる資料
登記申請から法人口座の開設までの期間
法務局への登記申請後、すぐに法人口座を申し込んだ場合、約1ヶ月後に口座が開設されます。金融機関によって口座開設の審査の日数は異なりますが、標準的な流れを紹介します。
- 登記申請
↓ - (1~2週間後)履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を入手
↓ -
法人口座開設申し込み
↓ -
(1~2週間後)審査
↓ - 法人口座開設
法人口座の開設に必要となる履歴事項全部証明書(登記簿謄本)は、会社を設立後1~2週間後でないと入手できません。また、口座開設のための審査は、地方銀行・都市銀行の場合1~2週間程度必要です。法人口座開設まで、登記申請から約1ヶ月ほどかかると見込んでおいた方がいいでしょう。
金融機関の選定
金融機関にもいろいろあります。どこで法人口座を開設するのが良いかを検討する必要があります。法人口座は複数持っていても良いので、まずは開設しやすい金融機関からトライするのも良いかもしれません。
都市銀行 | 地方銀行 | ネット銀行 | 信用金庫・信用組合 |
---|---|---|---|
|
|
|
|
都市銀行
誰もが知っている大手銀行です。信用力は抜群で、全国に支店が設けられています。
都市銀行に法人口座を開設する主なメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
都市銀行は、口座開設までの審査が厳しい傾向があります。振込手数料、ネット手数料などの設定も高めになっています。
※他行宛の3万円以上の振込…メガバンクで756円・ネット銀行は258円
しかし、「取引先が全国にいる」「事業を将来的に全国展開したい」という場合はやはり都市銀行がベスト。信頼性が高く、取引先にも安心感を持ってもらえます。すぐには難しくても、いずれは法人口座を作れるようにしたいものです。
地方銀行
地域密着の頼れる味方、地方銀行です。将来のメインバンクとなる可能性もあります。
地方銀行に法人口座を開設する主なメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
地方を基盤にする地方銀行は、中小企業を支援してくれる一面があります。融資や新規事業についての相談なども、親身になって受けてくれます。
都市銀行よりは法人口座開設が難しくないとも言われています。自分に合う金融機関を選んで取引銀行に選んでみてください。
ネット銀行
手数料が安く抑えられており、口座開設手続きなども難しくありません。スピーディーな口座開設が可能です。
ネット銀行に法人口座を開設する主なメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
ネット銀行は比較的スムーズに法人口座が開設できます。また、24時間・365日利用でき、ネットバンキングや振込手数料が安いなどの使い勝手の良さも大きな長所です。
メインの口座を持った上でサブバンクとして運用しても良いでしょう。振込などにはネット銀行を使うようにすると、振込手数料の節約になります。
信用金庫・信用組合
地域の共同組織である信用金庫と信用組合です。中小企業のサポートに熱心な心強い存在で、法人口座の開設がスピーディーです。
信用金庫に法人口座を開設する主なメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
信用金庫、信用組合は地域の金融機関であり、利用するには「その地域に居住していること」「その地域で事業をしていること」といった条件があります。たとえば信金は「地域のお金を地域のために使う」という目的があり、地元の中小企業の支援に熱心です。
法人口座の審査通過率は高く、口座開設も早いと好評です。メガバンクでは法人口座が作れなかったけれど、近所の信用金庫ではすぐに口座開設ができた、という例もあります。法人口座をできるだけ早く作りたい時に相談してみても良いでしょう。
法人口座の作り方
法人口座の申し込みの手順を見てみましょう。ここでは、住信SBIネット銀行の申し込み方法を例にあげてみます。
法人口座開設の必要書類
「法人としての本人確認書類」 3点
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本) ※発行日より3カ月以内の原本
- 法人の印鑑登録証明書
- 法人番号指定通知書
※法人番号指定通知書とは?
法人番号指定通知書とは、法人に割り当てられる13ケタのマイナンバーが記載された書類のことです。国税庁から郵送されたもののコピーを用意してください。または、「法人番号公表サイト」の法人情報画面を印刷したものでもOKです。
「代表者の本人確認書類」 1点
- 運転免許証のコピー等
「設立後半年以内の法人の場合」 ※下記のうちいずれか1点
- 所轄税務署宛の法人設立届出書(控)のコピー
- 所轄税務署あての青色申告承認申請書(控)のコピー
- 主たる事務所の建物登記簿謄本(現在事項証明書)のコピー ※発行日より3カ月以内
- 主たる事務所の建物賃貸借契約書のコピー
法人口座ができるまで、約2~3週間
住信SBIネット銀行では、口座開設申込書は公式サイトにあるものを印刷して用意するようになっています。また、代表者だけでなく担当者(経理担当など)を追加する場合は、担当者の本人確認書類も送付します。
口座開設申し込み書類が銀行に到着してから取引が開始できるまで、およそ2週間~3週間程度です。カードが到着したら、パスワード登録など初期設定後に取引をスタートできます。
申し込みの流れ
- 口座開設の申し込み
↓ - 口座開設申込書と必要書類の送付
↓ - 書類審査(5日程度)
↓ - カード送付(審査通過後、10日程度)
↓ - 各種パスワードの初期設定後、取引開始
必要に応じ提出を求められる資料とは?
どの金融機関も、法人口座を作る目的について確認します。審査の段階で、別の資料が必要となる場合も少なくありません。求められる資料は主に、会社の実態がわかる書類です。
- 会社案内
- 製品
- パンフレット、パンフレットの見本や作成の契約書
- 取引先への提案書、見積書、注文書、仕様書、提案書
- 事務所の賃貸契約書
- ホームページのプリント、ホームページ作成を依頼した契約書
- 行政機関等の許認可・届出・登録証
設立直後では、これらの資料を用意するのが難しいですが、可能なものは用意しておくと
審査へ有利に働きます。最初の申し込みのタイミングで追加資料として渡しておくと、審査も滞りなく進む可能性が高くなります。