事業開始等申告書とは、都道府県などへ提出する開業届のようなもの。個人事業を開業する際、原則的には提出が必要になります。地域によって名称や形式が異なり、事業所の所在地を管轄する税事務所などへ提出します。
この記事では、東京都の「事業開始等申告書」を例に、これから個人事業を開業する場合の書き方・記入例を紹介します。他の地域で開業する場合でも記入内容に大きな差は無いので、ぜひ参考にしてください。
目次
事業開始等申告書の書き方
東京都の「事業開始等申告書」の場合、記入項目は全部で10個です。上の①から順に、全ての項目について説明していきます。
【①~③】事業に関することなど – 事業開始等申告書
新規開業の場合、この部分はすべて左側の「新(変更後)」の欄に記入していきます。右側「旧(変更前)」の欄はすべて空欄のままでOKです。
① 所在地
お店や事務所などといった、事業所の住所を記入します。自宅を事務所として使う場合は、自宅の住所を記入しましょう。電話番号は携帯電話でも問題ありません。
このとき、自宅と事業所が別にあり、「開業届」で事業所の住所を納税地として申請している場合は、左側の「所在地」の文字を○で囲みます。
② 名称・屋号
お店の名前や、事業の「屋号」が決まっている場合は記入します。とくに決まっていなければ、空欄のままで構いません。
③ 事業の種類
事業の内容を簡潔に記入します。「小売業」「飲食店」「デザイナー」など、カンタンな表現でOKです。
【④~⑤】事業主に関すること – 事業開始等申告書
この部分に関しても、新規開業の場合は、すべて左側の「新(変更後)」の欄に記入していきます。右側「旧(変更前)」の欄はすべて空欄のままでOKです。
④ 住所
事業主の現住所を記入します。電話番号は携帯電話でも問題ありません。自宅を事務所として使っている場合は「同上」と記入すればOKです。
⑤ 氏名
事業主の氏名を記入します。事業で使用するペンネームなどがある場合も、ここには本名を記入しましょう。
【⑥~⑩】その他の項目 – 事業開始等申告書
⑥ 開始・廃止・変更等の年月日
事業の開業日を記入します。和暦・西暦はどちらでも構いません。開業日の設定に関して明確なルールはありませんが、原則として、売上が発生するより前の日付になります。
⑦ 事由等
開業の場合は「開始」の文字を○で囲みます。
⑧ ※法人設立
ここは、法人を設立する際に記入する欄です。個人事業を開業する際は、すべて空欄でOKです。
⑨ 署名
提出日の日付を記入し、事業主の署名をします。日付は、和暦・西暦どちらでも構いません。
⑩ 提出先
申告書を提出する税事務所の名前を記入します。東京都内でも複数の税事務所があるので、所轄の税事務所を確認しておきましょう。例えば、新宿区・中野区・杉並区に事業所がある場合、提出先は「新宿都税事務所」になります。
事業開始申告書の提出方法
入手方法 | 都道府県税事務所HPからダウンロードして印刷 都道府県税事務所で直接受け取る |
---|---|
提出先 | 所轄の都道府県税事務所 (地域によっては市町村役場にも提出が必要) |
提出方法 | 直接持参するか郵送する |
提出期限 | 開業後おおむね15日~1ヶ月以内 |
地域によっては、税事務所だけでなく、市区町村役場にも提出が必要になる場合があります。その場合は、同じものを2つ用意しましょう。東京都などの場合は、税事務所への提出のみでOKです。
提出期限は、おおむね開業後15日~1ヶ月以内に設定されている地域が多いです。ちなみに、東京都の場合は開業日から15日以内に提出が必要です。その他の主な地域に関しては、以下の表を参考にしてください。
自治体によって名称や提出期限が異なる
都道府県 | 申告書の名称 | 提出期限 | 提出先 |
---|---|---|---|
東京都 | 事業開始等申告書 | 開業日から15日以内 | 都税事務所 |
神奈川県 | 個人事業開業・休業・廃業届出書 | 開業日から1ヶ月以内 | 県税事務所 |
大阪府 | 事業開始・変更・廃止申告書 | 開業日から2ヶ月以内 | 府税事務所 |
愛知県 | 事業の開廃等の届出書 | 開業日の5日前まで | 県税事務所 |
埼玉県 | 事業開業・休業・廃業報告書 | 開業日から15日以内 | 県税事務所 |
上に挙げたのは、人口トップ5の都府県です。このような主要都市では、手続きが簡略化され、税事務所への提出のみで良い場合が多いです。それに比べて、地方都市の場合は市町村役場への提出も必要になるケースが多いので、あらかじめ確認しておきましょう。
事業開始申告書を出し忘れたら?
事業開始申告書を提出し忘れても、とくに罰則などはありません。期限より遅れて手続きすることも可能です。提出しなかった場合でも、確定申告などを通して、税事務所は事業の存在を把握できます。
「開業届」は出したほうがいい
事業開始申告書と似た書類で「開業届」というものがあります。いわゆる「開業届」とは「個人事業の開業・廃業等届出書」のことで、こちらは税務署へ提出します。どちらも開業の際に提出する書類ですが、混同しないようにしましょう。
開業届 | 事業開始申告書 | |
---|---|---|
概要 | 国税に関する届出 | 地方税に関する届出 |
提出先 | 所轄の税務署 | 所轄の税事務所など |
提出期限 | 開業日から1ヶ月以内 | 開業後おおむね15日~1ヶ月以内 |
開業届も事業開始申告書と同じように、提出し忘れてもとくに罰則などはありません。しかし「青色申告」をするためには、開業届を期限内に提出することが必須条件となります。「青色申告」で節税メリットを得たい場合、開業届は忘れずに提出しましょう。