地代家賃とは?
事業に関わる土地や建物の賃料は、「地代家賃」の勘定科目で経費に計上します。事業とプライベートの両方に関わる場合は、「家事按分」の処理が必要です。
地代家賃の具体例
- 事務所の家賃、管理費、共益費
- 月極駐車場の料金
- 倉庫やトランクルームの利用料
- レンタルオフィス、シェアオフィスなどの使用料
- 更新料、権利金、20万円未満の礼金など
- 借地料
なお、物件を借りる際に支払う「仲介手数料」や「火災保険料」は、地代家賃に含めず、別の勘定科目で処理するのが一般的です。(詳細は後述)
記帳例① 基本的な仕訳方法
たとえば、事業用に借りている月極駐車場の賃料(25,000円)を振り込んだときは、以下のように記帳します。
単式簿記の記帳例
日付 | 地代家賃 | 摘要 |
---|---|---|
20XX年9月30日 | 25,000 | 月極駐車場代 10月分 |
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年9月30日 | 地代家賃 25,000 | 普通預金 25,000 | 月極駐車場代 10月分 |
記帳例② 家事按分するときの仕訳方法
事業とプライベートで兼用している土地や建物の賃借料は、「家事按分」という処理を行い、事業使用分だけを経費に計上します。
例:自宅兼事務所の家賃(事業使用比率は40%とする)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年2月28日 | 地代家賃 40,000 | 普通預金 100,000 | 事務所家賃 |
事業主貸 60,000 | 家事使用分 |
上記の仕訳では、家賃10万円のうち、40%の4万円を「地代家賃」として経費に計上し、残りの6万円を「事業主貸」に計上しています。「事業主貸」は、事業用の資金を私的な目的で支出した際に使う勘定科目です。
記帳例③ 賃貸物件を借りるときの仕訳方法
賃貸の契約時には、家賃や敷金・礼金など、いくつもの費用がかかります。記帳の際には、下記のように勘定科目を使い分けましょう。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月1日 | 地代家賃 300,000 | 普通預金 465,000 | 事務所家賃(6月・7月分) 礼金 |
敷金 100,000 | 敷金 | ||
損害保険料15,000 | 火災保険料 | ||
支払手数料 50,000 | 仲介手数料 |
仕訳例の設定
- 家賃:月10万円(管理費・共益費込み)
- 礼金:10万円
- 敷金:10万円
- 火災保険料:15,000円
- 仲介手数料:5万円
- 全額を事業用の口座から支払う
上記の例では、敷金以外はすべて経費計上できます。敷金は、退去時に返金されることが前提なので、入居時点では経費計上できません。いったん「敷金」の勘定科目で資産計上しましょう。
【注意】20万円以上の礼金
- 20万円未満……支払った時点で全額を「地代家賃」に計上する
- 20万円以上……均等額を5年間*に渡って、少しずつ経費に計上していく
*契約期間が5年に満たない場合は、その契約期間となる
【補足】年をまたぐ家賃の仕訳方法
年をまたいで家賃を支払う際も、基本的には「支払ったタイミング」で経費計上して構いません。たとえば、12月に翌年1月分の家賃を支払うときは、以下のように仕訳をすればOKです(短期前払費用の特例)。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2021年12月26日 | 地代家賃 90,000 | 普通預金 90,000 | 事務所家賃(1月分) |
引用
…(前略)…本年中に支払った金額が1年以内の期間のものであるときは、そのまま本年分の必要経費にしても差し支えありません。
※「白色申告者の決算の手引き」にも同様の記述がある
通常、1年以上も先の家賃を支払うことはないでしょうから、基本的には「支払った時点で経費計上する」と考えて構いません。
決算書の書き方 -「地代家賃の内訳」
地代家賃は、白色申告の「収支内訳書」と青色申告の「青色申告決算書」のそれぞれに、内訳の記入欄が設けられています。
「地代家賃の内訳」の記入欄
収支内訳書 (2ページ目) |
青色申告決算書 (3ページ目) |
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支払先の住所・氏名 | 家賃の支払先(不動産会社や大家さん)の住所氏名 例:東京都世田谷区世田谷〇丁目〇〇 山田A男 |
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賃貸物件 | 借りている物件の用途 例:事務所、自宅兼事務所、事業用倉庫、店舗など |
本年中の 賃借料・権利金等 |
本年中に発生した賃借料(家賃)などの金額 ・「権更」……1年間で支払った権利金や更新料など ・「賃」………1年間で支払った賃借料 |
左の賃借料のうち 必要経費算入額 |
支払った家賃のうち、必要経費に計上した分の金額 家事按分をしていなければ「本年中の賃借料」と一致する |
まとめ
- 「地代家賃」は必要経費の勘定科目
- 事業に関わる土地代や家賃などが当てはまる
- 事業とプライベートで兼用している費用は「家事按分」をする
- 契約時には、家賃、礼金、管理費、共益費などを「地代家賃」として計上する
- 家賃を前払いした場合、基本的に支払ったタイミングで経費計上してOK
会計ソフトによっては「地代家賃」に似たような、「賃借料」や「リース料」といった勘定科目も用意されています。これらは、一般的に下記のような目安で使い分けられています。
地代家賃 | 土地や建物を借りる際に使う |
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賃借料 | OA機器やレンタカーなどを借りる際に使う |
リース料 | リース契約に基づいてものを借りる際に使う |
「賃借料」と「リース料」の勘定科目は、決算書にはあらかじめ記載されていません。必要に応じて、みずから追記しましょう。