自宅兼事務所の家賃や光熱費などは「家事按分」することで、費用の一部を必要経費に計上できます。本記事では、家事按分の対象になる費用や記帳例を紹介します。
家事按分とは?
個人事業では、事業とプライベートの両方に関わる支出が発生することがあります。このような両方の側面を持つ支出について、合理的な割合で事業分とプライベート分に区別することを「家事按分(按分)」といいます。
家事按分することで、事業分は必要経費に計上できます。自宅兼事務所で仕事をする人は、特に家事按分する機会が多いでしょう。たとえば家賃・電気代・インターネット代などは、家事按分することで、かかった費用の一部を経費にできます(詳細は後述)。
対象の費用と按分基準
家事按分の対象となるのは、以下のような費用です。
家事按分の対象となる費用(一例)
- 自宅兼事務所の家賃や電気代
- 自宅兼事務所にかけた火災保険や地震保険の保険料
- 業務連絡にも使用する携帯電話の通信料
- 公私で併用するインターネット料金
- 事業とプライベートの両方で使う自動車のガソリン代
家事按分の割合のことを「按分比率」と呼びます。按分比率は、事業で使用している面積や時間などを基準に、事業主本人が設定します(按分基準)。
按分基準の例
家賃 |
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電気代 |
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インターネット料金 |
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ガソリン代 |
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按分比率は、客観的に納得できる割合でなくてはなりません。自分で決められるからといって、根拠なく自分に有利な按分比率を設定すると、税務署に指摘される可能性があります。
仕訳例 – 自宅兼事務所の家賃
自宅兼事務所の家賃は「使用面積」や「使用時間」などを基準に按分比率を設定します。仕事部屋がある場合など、事業で使用するスペースが明確に区分できるなら「使用面積」を基準にするとよいでしょう。
ここからは以下の基本設定に基づいて、自宅兼事務所の家賃を「使用面積」を基準に按分する際の仕訳例を紹介します。
基本設定
家賃 | 20万円/月 |
---|---|
支払い方法 | 事業用口座から引き落とし |
按分基準 | 使用面積 ・仕事部屋 …………24㎡ ・プライベート分……96㎡ |
この場合、按分比率(事業で使用する割合)は以下のように求めます。
- 24㎡ + 96㎡ = 120㎡ (全体の面積)
24㎡ ÷ 120㎡ = 0.2 → 20%(按分比率)
按分比率が20%なので、家賃20万円のうち4万円は「地代家賃」として経費に計上できます(20万円 × 0.2 = 4万円)。残りの16万円は経費にはできませんが、事業用口座から支払ったので「事業主貸」で記帳しておきましょう。
仕訳例 – 自宅兼事務所の家賃(按分比率20%)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年1月25日 | 地代家賃 40,000 | 普通預金 200,000 | 1月分の家賃 |
事業主貸 160,000 | 家事使用分 |
この仕訳は「銀行預金が20万円減った。そのうち4万円は経費として計上し、残りの16万円はプライベートな支出として処理した」ということを表します。
まとめ
事業分とプライベート分がしっかり区別できる費用は、家事按分することで一部を必要経費に計上できます。
家事按分の対象となる費用(一例)
- 自宅兼事務所の家賃や電気代
- 自宅兼事務所にかけた火災保険や地震保険の保険料
- 業務連絡にも使用する携帯電話の通信料
- 公私で併用するインターネット料金
- 事業とプライベートの両方で使う自動車のガソリン代
家事按分する際は、「事業で使用した分」と「プライベートで使用した分」を、合理的に定めた割合(按分比率)で区分する必要があります。
家事按分のポイント
- 家事按分することで、事業分の費用は必要経費に計上できる
- 家事按分の計算に用いる「按分比率」は、事業主がみずから設定する
- 按分比率の割合は、客観的に納得のいくものにする
按分比率は、使用面積・日数・時間などを基準に、事業主がみずから設定します。ただしこの割合は、税務署員に根拠を聞かれた場合に納得してもらえる数字でなくてはなりません。税務調査で認められなければ追徴課税につながるので、按分比率は慎重に設定しましょう。