「事業主貸・事業主借・元入金」は、個人事業主に特有の勘定科目ですが、白色申告では全く使わなくてOKです。本記事では、これらの科目について、白色申告者向けに説明しています。
事業主貸・事業主借・元入金とは
事業主貸・事業主借・元入金は、個人事業主に特有の勘定科目です。ただし白色申告では、これらの勘定科目を使う必要はありません。
事業主貸・事業主借・元入金(青色申告における使用例)
- 事業主貸……事業用資金を事業主のプライベートのために支払ったとき
- 事業主借……プライベートのお金を事業のために支払ったとき
- 元入金………事業を始めるとき&年をまたいだときの事業用資金を計上するとき
青色申告では帳簿づけの段階から、これらの勘定科目を使用します。また、青色申告者が確定申告で提出する書類に、これらの勘定科目を記入する項目があります(本記事では55万円控除 or 65万円控除の青色申告を想定)。
白色申告・青色申告での扱い
白色申告では、「事業主貸・事業主借・元入金」(以下「事業主貸など」)を使わなくても、帳簿づけと確定申告ができます。一方で、青色申告では、事業主貸などの勘定科目を使って帳簿づけします。
事業主貸・事業主借・元入金の扱い
白色申告 | 青色申告 | |
---|---|---|
帳簿づけ | 使わない | 使う |
確定申告 | 記入しない | 記入する (貸借対照表のみ記入) |
白色申告では、事業における収入と必要経費さえ分かればよいので、事業主貸などの科目を使いません。事業主貸などは、収入にも必要経費にも該当しないので、わざわざ用いる必要がないのです。ただ、これらの科目を使って帳簿づけをしても問題はありません。
青色申告(55万円 or 65万円控除)では、収入や必要経費以外に、事業資産などの情報も申告する必要があります。事業主貸などの科目は、資産や負債の情報をきちんと申告するために用います。
記帳例① 事業のお金をプライベートで使った場合
白色申告者が事業資金をプライベートで使用した場合、基本的にその記帳は不要です。ただ、現金や預金残高などの帳簿を任意で作成している人は、その情報を記帳しましょう。
例えば、事業用口座から生活費10万円を下ろしたときは、以下のように記帳します。
日付 | 入金 | 出金 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年4月25日 | 100,000 | 生活費 |
白色申告であれば、このように「事業主貸」の科目を使わずに記帳できます。
記帳例② 個人のお金で必要経費を支払った場合
プライベートのお金で必要経費を支払った場合でも、通常の取引のように記帳しましょう。下記のように記帳しておけばOKです。「事業主借」の科目を使う必要はありません。
例:私用のカードからボールペン代2千円を支払ったとき
日付 | 消耗品費 | 摘要 |
---|---|---|
20XX年11月23日 | 2,000 | ボールペン代 |
事業のお金で支払っていようが、個人のプライベートなお金で支払っていようが、特に記帳内容に変わりはありません。なぜなら、事業のお金・個人のお金、どちらで支払っても、事業の必要経費が発生したことに変わりはないからです。
白色申告における元入金
白色申告では、「元入金」の科目も扱うことはありません。白色申告では、事業の収入と必要経費が分かれば十分で、資本の情報を申告する必要がないからです。ちなみに元入金は、法人でいうところの資本金のようなものです。
元入金の扱い
白色申告 | 青色申告 |
---|---|
扱わない | ・新規開業時に準備した資金などを「元入金」として記帳する ・毎年の期末に元入金の計算を行う |
もし白色申告から青色申告へ切り替える場合には、切り替えるタイミングで「このお金は事業資金として使うぞ」と決めた金額を元入金の勘定科目で計上しましょう。元入金の金額が税額に影響するわけではないので、あまり細かく考える必要はありません。