事業のために必要な支出は、経費に計上することができます。本記事では、白色申告の個人事業主向けに、帳簿づけで使用する経費の科目とその内容についてまとめました。
白色申告の経費一覧
白色申告者が使う「経費」の科目を一覧表にまとめました。まずは、白色申告の決算書「収支内訳書」に記載されている科目(全18項目)について、それぞれの概要と具体例を紹介します。
白色申告の経費【一覧表】
概要と具体例 | |
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給料賃金 | 従業員に支給する給料 基本給、残業代、賞与、退職金 |
外注工賃 (がいちゅうこうちん) |
外部の業者などに仕事を依頼した際の費用 デザイン発注、プログラミングの委託、営業代行 |
減価償却費 (げんかしょうきゃくひ) |
固定資産を減価償却する際の科目 事務所・店舗などの建物、自動車、高価なパソコン |
貸倒金 (かしだおれきん) |
売掛金・貸付金などの回収が困難になった際の損失額 取引先が倒産して回収できなくなった売掛金 |
地代家賃 | 事業所や店舗などの賃借料や使用料 事務所の家賃、レンタルオフィスの利用料、月極の駐車場代 |
利子割引料 | 事業で借り入れした際の利子など 金融機関の支払利息、自動車ローンの利子、分割払いの手数料 |
租税公課 (そぜいこうか) |
事業で課される税金や、公的な団体に対する負担金 個人事業税、固定資産税、自動車税、収入印紙代 |
荷造運賃 | 商品や製品などの発送に関わる費用 ダンボール、緩衝材、宅急便代、航空便の輸送費用 |
水道光熱費 | 事業におけるインフラに関わる費用 水道代、電気代、ガス代、暖房灯油代 |
旅費交通費 | 移動にかかる費用や宿泊費用 電車賃、バス代、タクシー代、出張時のホテル代 |
通信費 | 事業上の通信や郵便にかかる費用 インターネット料金、電話料金、切手代、ハガキ代 |
広告宣伝費 | 事業や商品などを不特定多数に向けて宣伝する際の費用 HPの制作費用、チラシ・ポスターの印刷代、名刺の印刷代 |
接待交際費 | 事業を営む上で必要な接待や交際にかかる費用 取引先との飲食代、お中元・お歳暮代、祝電代 |
損害保険料 | 事務所・店舗・商品などを対象とした損害保険の費用 火災保険、自動車保険、盗難保険 |
修繕費 | 固定資産の維持管理や修理にかかる費用 パソコンの保守料、自動車の修理代、壁の補修費用 |
消耗品費 | 短期間で消耗する備品などの購入費用(10万円未満) ボールペン、安価なパソコン、ソフトウェア |
福利厚生費 | 従業員の生活向上や労働環境の改善のために支出する費用 健康診断費用、忘年会費用、残業中の食事代 |
雑費 | どの科目にもあてはまらない少額の費用 引越し費用、ゴミ処理代、清掃代 |
事業とプライベートの両方に関係する費用が発生したら、事業で利用した分のみ経費に計上しましょう(家事按分)。たとえば自宅兼事務所で仕事をする人なら、「地代家賃」「水道光熱費」「通信費」などは家事按分して費用計上できるケースも多々あります。
必要に応じて自分で作成する科目
収支内訳書に記載されていない科目を、新たに作成することも可能です。ある特定の費用だけ金額が膨らんでいると、税務調査官に目をつけられるもとになります。上手に科目を追加して分散させることで、無用な詮索を防ぐことができます。
下表に、決算書には記載されていないものの、よく使われる科目についてまとめました。
自分で作成する科目の一例
概要と具体例 | |
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支払手数料 | 各種支払い時の手数料 振込手数料、送金手数料、仲介手数料、証明書の発行手数料 |
新聞図書費 | 情報収集のために必要な書籍の購入費用 新聞代、書籍代、電子書籍の購入費用、雑誌の定期購読料 |
パソコン関連費 | パソコンや周辺機器などの費用(10万円未満) マウス、プリンター、セキュリティソフト |
車両関係費 | 事業用の車両に関する出費 ガソリン代、車検代、タイヤ交換費用 |
研修費 | 事業に必要なスキルを身につけるために要した費用 セミナーの受講料、テキスト代、通信教育の費用 |
会議費 | 打ち合わせや会議でかかる費用 喫茶店のコーヒー代、お茶代、弁当代、会議の会場代 |
諸会費 | 加入している団体や自治体などに支払う会費 カードの年会費、商工会費、町内会費、自治会費 |
賃借料 (ちんしゃくりょう) |
機械や設備などを外部から借りてくる際の費用 工具・家具のレンタル料、レンタルオフィスの一時的な利用料 |
上表で示したのはあくまでも一例です。他にも必要な科目があれば、自分で作成して構いません。作成する際は、経費の内容がひと目でわかる科目名になるよう工夫しましょう。
経費は収支内訳書のどこに書く?
収支内訳書は、1ページ目に「経費」の記入欄が設けられています。ここに、1年間に支出した経費の金額を、科目ごとにそれぞれ記入していきましょう。
経費の記入箇所 – 収支内訳書
上記の空欄(赤枠部分)には、自分で新たに追加した科目を記入します。ただ、空欄は5つしかないので、むやみに科目を増やすのはおすすめしません。
どうしても科目が増えてしまい、記入欄が足りない場合は、1番下の空欄に、書ききれない分の経費について「○○費ほか ✕✕(合計額)円」などと記入しておきましょう。
引用
Q 決算書等の「科目」欄が不足する場合、どのように入力したらいいですか?
A 欄が不足する場合は、一番下の欄に入力しきれなかったものの合計額を入力してください。その際、科目名は「○○ほか」などと入力してください。
領収書・レシートは5年保管する
出費の事実を証明するために、経費の領収書やレシートなどは、一定の期間保存しておく必要があります。白色申告の場合、原則5年間の保管が義務付けられています。
電車賃やご祝儀など、そもそも領収書が発行されない出費については「出金伝票」を作成しましょう。出金伝票は、100円ショップや文房具店で市販されているので、事業を始めたら1冊は備え付けておくことをオススメします。
出金伝票はみずから発行するものなので、多用は好ましくありません。どうしても領収書がない場合のみ利用するようにしましょう。出金伝票も、領収書などとと同様に、原則5年間の保存が義務付けられています。
まとめ
事業を営む上で必要な支出であれば、経費に計上できます。確定申告で提出する「収支内訳書」に記載されている経費の科目は合計で18項目ですが、必要に応じて自分で科目を追加して構いません。
経費を計上する際のポイント(白色申告者向け)
- 特定科目の金額だけが膨らまないように配慮する
- 収支内訳書にない科目を自分で新たに追加してOK
- 同じ内容の取引は毎回同じ科目で帳簿づけすること
- 事業とプライベートの両方で使用するものは家事按分して事業分のみ経費に計上する
- 領収書やレシートなどは原則5年間保存する
日々の支出の中には、どの科目で記帳すべきか迷うものもあるでしょう。判断が難しい支出であっても、どの科目で記帳するかを自分で判断してしまって構いません。一度決めた科目で、今後もずっと記帳していくということが重要です(継続性の原則)。