所得は、その性質に応じて10種類に大別されています。10種類すべての所得について、具体例や計算方法などの重要ポイントをまとめました。
10種類の所得【一覧表】
利子所得 | 預貯金や公社債の利子などによる所得 例:預金に生じる利子、保有する国債や社債の利子 |
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配当所得 | 法人から受ける利益の配当などによる所得 例:株式の配当金、投資信託の普通分配金 |
不動産所得 | 不動産の貸し付けなどで発生する所得 例:所有する賃貸物件の家賃収入 |
事業所得 | 事業から発生する所得 例:個人経営店の売上、フリーランスが受け取る報酬 |
給与所得 | 勤務先から受ける給料や賞与による所得 例:会社員やアルバイトが受け取る給与・ボーナス |
退職所得 | 退職にまつわる一時的な所得 例:退職金、一括で受け取るiDeCoの給付金 |
山林所得 | 山林の譲渡で発生する所得 例:伐採した山林の売却益、山ごと譲渡する際の山林部分の売却益 |
譲渡所得 | 資産や権利の譲渡によって発生する所得 例:土地や株式の売却益 |
一時所得 | 上記の8つに該当しない、一時的な所得 例:生命保険の一時金、懸賞サイトで当たった賞金・賞品 |
雑所得 | 上記の9つに該当しない所得 例:公的年金(国民年金や厚生年金)、会社員の副業収入 |
利子所得
概要 | 預貯金や公社債の利子、合同運用信託の分配金などによる所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 利子等の収入金額 = 利子所得 (利子等の収入金額が、そのまま利子所得の金額になる) |
- 預金につく利子等はすでに源泉徴収されているため、基本的に確定申告をしない
- 海外の口座で得た利子(源泉徴収されていないもの)については申告が必要
- 誰かにお金を貸して受け取る利子は利子所得にならない(事業所得 or 雑所得)
配当所得
概要 | 法人から受ける剰余金や利益の配当などによる所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 配当収入 = 配当所得* |
*株等を買うためにお金を借りた場合は、その利子を配当収入から差し引ける
- 株の配当金などは、基本的に源泉徴収されるため確定申告が不要
- ただ、あえて申告をしたほうが節税できる場合もある
- NISAの配当金や投資信託の特別分配金は非課税(所得計算に含めない)
不動産所得
概要 | 土地や建物、またはそれに付随する権利などの貸付で発生する所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 不動産収入 - 必要経費 = 不動産所得 |
- 青色申告の場合は、所得計算に「青色申告特別控除」を適用できる
- 不動産所得の赤字は、他の所得の黒字と相殺できる(損益通算)
- 「不動産の貸付 + α」のサービスを提供する場合(寮など)は「事業所得」
事業所得
概要 | 対価を得て継続的に行う事業から発生する所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 事業収入 - 必要経費 = 事業所得 |
- 一般的に個人事業が専業なら「事業所得」だが、副業だと「雑所得」になる場合も
- 青色申告の場合は、所得計算に「青色申告特別控除」を適用できる
- 事業所得の赤字は、他の所得の黒字と相殺できる(損益通算)
給与所得
概要 | 雇用主から労務の対価として支払われる給与・賞与などの所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 給与収入 - 給与所得控除 = 給与所得 |
- 会社側が年末調整をしてくれるため、ほとんどの給与所得者は確定申告が不要
- 副業による雑所得などが20万円を超えたら、会社員でも確定申告が必須
- 複数の会社に勤めている場合など、給与所得だけでも申告が必要な人もいる
退職所得
概要 | 退職にまつわる一時的な所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | (退職収入 - 退職所得控除) × 1/2 = 退職所得 |
- 退職金は源泉徴収の対象なので、ほとんどの場合は申告をしない
- 退職所得控除の控除額は勤続年数に応じて増える(最低でも80万円)
- iDeCoの給付金などは一括で受け取ると「退職所得」、分割だと「雑所得」になる
山林所得
概要 | 山林(取得から5年を超えるもの)の譲渡で発生する所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 山林収入 - 必要経費 - 特別控除 = 山林所得 |
- 特別控除の控除額は最高「50万円」
- 取得から5年以内の山林を譲渡する場合、「事業所得」か「雑所得」になる
- 土地ごとセットで譲渡する場合、土地の部分は「譲渡所得」になる
譲渡所得
概要 | 土地・建物・株式などの譲渡によって発生する所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 譲渡収入 - (譲渡資産の取得費 + 譲渡にかかった費用) = 譲渡所得* |
*上場株式を譲渡した場合の計算式
- 譲渡するもの(土地・建物・株式など)によって税額計算の方法が異なる
- マイホームを譲渡する際には、最高3,000万円の特別控除が適用される
- 家具や衣服をフリマなどで売っても、その利益は非課税(税額計算に含めない)
一時所得
概要 | 上記の8つに該当せず、継続的な営利行為やモノ・サービスの対価でない一時的な所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 一時収入 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除 = 一時所得 |
- 特別控除の控除額は最高「50万円」
- 懸賞で当たる商品券や家電なども、時価に換算して一時所得に含める
- 源泉徴収された保険金(一時払養老保険など)については確定申告をしない
雑所得
概要 | 上記の9つに該当しない所得 |
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具体例 |
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基本の計算方法 | 公的年金等に係る雑所得 = 公的年金等 - 公的年金等控除 公的年金等以外の雑所得 = 収入金額 - 必要経費 |
- 会社員の副業収入は「事業所得」でなく「雑所得」に該当することがある
- 国民年金や厚生年金の収入が400万円以下なら確定申告は不要(他に所得がない場合)
- iDeCoなどの給付金は分割で受け取ると「雑所得」、一括だと「退職所得」になる
まとめ – 所得の計算方法
利子所得 | 利子等の収入金額 = 利子所得 |
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配当所得 | 配当収入 - 株式などを取得するための借入金の利子 = 配当所得 |
不動産所得 | 不動産収入 - 必要経費 = 不動産所得 |
事業所得 | 事業収入 - 必要経費 = 事業所得 |
給与所得 | 給与収入 - 給与所得控除 = 給与所得 |
退職所得 | (退職収入 - 退職所得控除) × 1/2 = 退職所得 |
山林所得 | 山林収入 - 必要経費 - 特別控除 = 山林所得 |
譲渡所得 | 譲渡収入 - (譲渡資産の取得費 + 譲渡にかかった費用) = 譲渡所得 |
一時所得 | 一時収入 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除 = 一時所得 |
雑所得 | 公的年金等に係る雑所得 = 公的年金等 - 公的年金等控除 公的年金等以外の雑所得 = 収入金額 - 必要経費 |
*ここで示しているのは基本的な計算方法です
所得ごとに計算方法が異なるのは、日本の税制が「所得の担税力に応じて課税する」という考えに基づいているからです。原則として、どの所得も税率は同じなので、所得計算の段階でほどよく差が出るようになっているのです(分離課税の所得は税率が異なる)。
ここで言う「担税力」とは、税金を負担する力のことです。たとえば、所得を下記の3つに大別したとき、担税力の高い「資産性所得」の方が、特別控除などの優遇措置が少ない傾向にあります(あくまで原則的な考え方です)。
資産を持っているだけで生じ得る「資産性所得」よりも、本人の健康状態や年齢によって変動しやすい「勤労所得」の方が、税制面で有利な計算方法になっているわけです。こう考えると、「給与所得控除」や「退職所得控除」などの存在にも納得がいきます。
ただし、実際は様々な特例措置によって「資産性所得」の税負担が軽くなる場合も多いです。上記で説明したのはあくまでベースとなる考えなので、税制をざっくり理解するための参考程度にとどめておいてください。