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労働保険料の納付手続きまとめ

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2021/04/02

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労働保険料の納付手続きまとめ

労働保険料を納付する際は、「労災保険」と「雇用保険」の保険料を合わせて、1年分を「前払い」します。初めて従業員を雇う場合のみ50日以内に納付が必要で、それ以降は毎年6月1日~7月10日が手続き期間となります。条件を満たせば、分割納付もできます。

労働保険とは?

労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」をあわせた保険制度の総称です。事業主は、基本的に全ての従業員をこれらに加入させる義務があります。労災保険料は事業主が全額負担し、雇用保険料は事業主と従業員の双方で負担します。

労働保険料の納付方法

労働保険料は「労災保険」と「雇用保険」の2つを合わせて、一年分を「前払い」します。つまり、「一年分の保険料を計算して申告・納付する」という作業が毎年必要になるのです。またその際、前年度の計算と実際の保険料との差分も申告・納付します。

納付期間は、原則として毎年6月1日~7月10日。労働保険は4月で年度を区切るため、4月1日~翌3月31日の保険料を計算し、上記の期間中に納付するわけです。なお、開業してから初めて従業員を雇った時のみ、雇用の翌日から50日以内に納付が必要になります。

労働保険料の納付のスケジュール

金額が大きい場合などは分割払いもできる

保険料の金額が40万円以上の場合、または「労働保険事務組合」に保険事務を委託している場合に限り、保険料を3回に分けて納付することもできます。

二元適用事業の場合は保険料を別々に納付する

基本的に「労災保険」と「雇用保険」の保険料はまとめて納付しますが、「二元適用事業」に該当する事業者は、2つを別々に申告・納付する場合があります。以下のような業種が「二元適用事業」に該当し、それ以外を「一元適用事業」と呼びます。

  • 建設業
  • 農林水産業
  • 畜産業
  • 養蚕業

はじめての納付 – 新規加入の場合

初めて従業員を雇って労働保険に「新規加入」する場合は、従業員を雇った翌日から50日以内に保険料を申告・納付します。なお、翌年度からは従業員の増減に関わらず、基本的に6月1日~7月10日の期間中に納付します。

ここで納付するのは、新規加入した年度分の「概算保険料」です。雇用日から3月31日までの保険料を計算した上で、所定の申告書を提出し、期限までに納付します。「概算保険料」は、予定している給与額をもとに計算します。

2回目以降の納付 – 年度更新の場合

前年度から従業員を雇っている事業主の場合は、原則として6月1日~7月10日の間で「前年度の確定保険料」を精算し、「新年度の概算保険料」を納付します。これが、労働保険における「年度更新」です。

前年度の確定保険料を精算する

年度更新の際には、前年度に納付した「概算保険料」と、実際の給与額などから計算した「確定保険料」との差分も納付します。「確定保険料」は延納することができません。必ず6月1日~7月10日の間に申告・納付が必要です。

確定保険料納付

なお「確定保険料」が「概算保険料」を下回る場合は、払いすぎていた分を、新年度の支払いに充てることができます。

納付手続きの流れ

労働保険料を納付する際には、「労働保険 概算・確定 保険料申告書」を作成します。この申告書を提出して、前年度の「確定保険料」と新年度の「概算保険料」、また前年度の不足分など、すべての申告を行います。納付手続きは、以下のような流れで行います。

労働保険料納付手続きの流れ

「労働保険 概算・確定 保険料申告書」は、労働保険の加入手続きを済ませたあとに受け取ることができます。年度更新の場合は、労働局から送られてきます。

1. 前年度の総賃金を集計する – 年度更新の場合のみ

年度更新の場合は、まず前年度に支払った総賃金の集計をします。この集計をもとに、前年度の「確定保険料」を決定するわけです。総賃金を集計したら「確定保険料」を申告書に記入し、前年度に納付した「概算保険料」との差額を計算します。

2. 総賃金の予定額から新年度の概算保険料を計算する

「概算保険料」は、1年間で支払う予定の総賃金をもとに計算します。年度更新の場合は、前年度の総賃金をもとに計算するのが一般的です。総賃金の予定額が決まったら、そこに保険料率をかけて、「労災保険」と「雇用保険」の概算保険料をそれぞれ計算します。

3. 申告書を作成して、申告・納付する

上記の計算を済ませ、申告書を作成したら、期限までに銀行などに提出して納付を行います。「延納」を希望する場合は、申告書の該当部分に記入します。なお「二元適用事業」の場合は、「労災保険」と「雇用保険」の保険料を、別々の申告書で提出します。

労災保険と雇用保険の保険料率

労働保険の保険料は、総賃金に保険料率をかけて計算しますが、「労災保険」と「雇用保険」ではそれぞれ料率が異なります。業種ごとの料率を確認しておきましょう。なお、受け取った申告書に、すでに保険料率が印字してあった場合は、それに従えばOKです。

総賃金とは?

労働保険料を計算する際に「総賃金」としてカウントするのは、月々の給与だけではありません。総賃金にカウントするものとしないものは、主に以下のように分けられます。

賃金にカウントするもの 賃金にカウントしないもの
  • 給与、賞与
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 前払い退職金
  • 役員報酬
  • 結婚祝金
  • 出張旅費

労災保険料は原則3年ごとに改定

労災保険の料率は業種によって異なり、原則3年ごとに改正されます。2021年4月現在、主な業種の保険料率は、以下の表のとおりです。この保険料率は、平成30年4月から改正されていません。ちなみに、労災保険料は事業主が全額負担します。

業種 労災保険料率
小売業・飲食店など 0.3%
交通運輸業 0.4%
食料品製造業 0.6%
建築事業 0.95%
農業など 1.3%

厚生労働省の労災保険料率

雇用保険料は年度ごとに改定の可能性あり

雇用保険の料率は年度ごとに改正される可能性があります。2021年4月現在、業種ごとの料率は、以下のようになっています。ちなみに、雇用保険料は従業員と事業主の双方で負担します。

雇用保険料率 従業員の負担 事業主の負担
一般の事業 0.9% 0.3% 0.6%
農林水産・清酒製造の事業 1.1% 0.4% 0.7%
建設の事業 1.2% 0.4% 0.8%

保険料の具体的な計算例

年間の労働保険料は、以下の式のように表すことができます。

労働保険料の計算式

例えば、1年間の総賃金が310万円の従業員を1人雇っている小売業の場合、納付する保険料は以下のように計算します。なお小売業の場合、2021年4月現在の労災保険料率は0.3%、雇用保険料率は0.9%です。

労働保険料の計算式

なお、このうち事業主が負担するのは、雇用保険料の従業員負担分を除いた27,900円となります。

まとめ – ケースごとの納付手続き

労働保険料の納付方法は、「新規加入」の場合と「年度更新」の場合とで、以下のように異なります。

納付期限(延納の場合を除く) 納付内容
新規加入の場合 初雇用の翌日から50日以内
  • 雇用年度の「概算保険料」
年度更新の場合 原則として毎年6/1~7/10
  • 前年度「確定保険料」の過不足分
  • 新年度の「概算保険料」

新規加入の場合

初めて従業員を雇って労働保険に「新規加入」する場合は、従業員を雇った翌日から50日以内に「概算保険料」を申告・納付する必要があります。「概算保険料」は、その年度中に支払う賃金の予定額をもとに計算し、所定の申告書に記入して提出します。

年度更新の場合

前年度から従業員を雇っている場合は、原則的に6月1日~7月10日の間で保険料を納付します。この手続きを、労働保険の「年度更新」と呼びます。年度更新では、前年度に納付した「概算保険料」と、実際の総賃金から計算した「確定保険料」との差分を調整します。

保険料の計算方法

労働保険料は以下のように計算します。

労働保険料の計算式

ただし「労災保険」と「雇用保険」ではそれぞれ料率が異なり、業種によっても変わってきます。受け取った申告書に、すでに保険料率が印字してある場合は、それに従えばOKです。

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