個人事業主は、所得税をみずから計算して申告するのが基本です。今回は、所得税の計算方法について、順を追って説明します。
所得税を算出する手順
個人事業主の場合、所得税は上図のように算出します。本記事では、算出方法をざっくり以下の3つの手順に分け、それぞれ説明していきます。
手順① 所得を求める…………………収入 - 必要経費( - 青色申告特別控除) = 所得
手順② 課税所得を求める……………所得 - 所得控除 = 課税所得
手順③ 所得税を求める………………課税所得 × 税率( - 控除額) = 所得税
所得税のおさらい
個人事業主は、原則として1月1日~12月31日の会計結果をもとに、みずから所得税を計算します。そして、翌年の2月中旬から始まる確定申告期間中に、所得税の申告と納付を行います(申告納税制度)。
手順① 所得を求める
個人事業主の「所得」は、収入から必要経費を差し引くことで求められます。この際、青色申告の場合は、さらに「青色申告特別控除」も一緒に差し引くことができます。
青色申告特別控除は、青色申告者のみが適用できる特別な控除です。クリアする要件によって「10万円・55万円・65万円」と3段階の控除額が設定されています。
手順② 課税所得を求める
「課税所得」とは、税金を課される対象の所得を指します。手順①で算出した「所得」から「所得控除」を差し引いて求めます。所得控除は、数ある中から自分が要件を満たすものについて適用を受けられます。
所得控除の主な対象者と控除額(一例)
基礎控除 | 合計所得が2500万円以下の人 基本48万円 |
---|---|
社会保険料控除 | 国民年金や国民健康保険などの保険料を支払っている人 その年に納めた保険料の全額 |
生命保険料控除 | 対象となる保険の保険料を支払っている人 最高12万円 |
配偶者控除 | 対象となる配偶者がいる人 13万円 or 26万円 or 38万円 |
扶養控除 | 16歳以上の扶養親族がいる人 基本1人につき38万円(扶養親族の年齢によって異なる) |
所得控除はほかにもありますが、今回は対象者が多いものを表にまとめました。なかでも「基礎控除」と「社会保険料控除」は、ほとんどの人が適用できます。なお、所得控除はこちらから申告しないと適用されないので、申告漏れがないように注意しましょう。
手順③ 所得税を求める
手順②で求めた「課税所得」に所定の税率をかけ、下表の控除額を差し引くことで、所得税が求められます。課税所得の金額が高くなるほど、税率も高くなる仕組みです(超過累進税率)。
所得税の税率 – 税額の速算表
課税所得の金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円 | 5% | 0円 |
195万円~330万円 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円~ | 45% | 4,796,000円 |
「~」は「超 ~ 以下」
上表の「控除額」は、単に計算を簡単にするために設定された数字で、所得控除などとは全く別のものです。
復興特別所得税も一緒に納付する
2013年~2037年までの間は、所得税と一緒に「復興特別所得税」も納めます。復興特別所得税は、東日本大震災の復興に用いる財源確保のための税金です。
復興特別所得税が課されるのは、所得税の納付義務があるすべての人です。つまり2037年までは、手順①~③で算出した所得税に復興特別所得税を合算した金額を、確定申告で納めることになります。
復興特別所得税の計算方法
- 所得税 × 2.1% = 復興特別所得税
所得税の計算例
これまで説明してきた手順にならって、実際に所得税を計算してみましょう。以下の設定に基づいて、所得税を算出します。
試算の基本設定 : 30代独身、青色申告の個人事業主
事業収入 | 600万円 |
---|---|
必要経費 | 200万円 |
青色申告特別控除 | 65万円 |
所得控除 | 102万円 (基礎控除48万円・社会保険料控除は54万円と仮定) |
手順① 所得を求める
- 収入 − 必要経費 − 青色申告特別控除 = 所得
600万円 − 200万円 − 65万円 = 335万円 (所得)
手順② 課税所得を求める
- 所得 − 所得控除 = 課税所得
335万円 − 48万円 − 54万円 = 233万円 (課税所得)
手順③ 所得税を求める
先述の速算表により、課税所得「233万円」の所得税率は「10%」だとわかります。課税所得に税率を掛けた金額から、速算表の控除額(97,500円)を差し引くことで、所得税が求められます。
- 課税所得 × 税率 = 所得税
233万円 × 10% − 97,500円 = 135,500円 (所得税)
復興特別所得税を上乗せすると?
復興特別所得税は、所得税に「2.1%」をかけることで求められます。復興特別所得税を算出したら、所得税と合算しましょう。この金額が、実際に税務署へ納める税額となります。
- 所得税 × 2.1% = 復興特別所得税
135,500円 × 2.1% = 2845.5円 (復興特別所得税)135,500円 + 2,845.5円 =138,345.5円 → 138,300円* (納付額)
*納税確定額の100円未満は切り捨て
まとめ
所得税のざっくりとした計算の手順は以下の通りです。
手順① 所得を求める…………………収入 - 必要経費( - 青色申告特別控除) = 所得
手順② 課税所得を求める……………所得 - 所得控除 = 課税所得
手順③ 所得税を求める………………課税所得 × 税率( - 控除額) = 所得税
収入から差し引く「必要経費」や、所得から差し引く「所得控除」などの金額が多いほど、所得税も少なくなります。
「税額控除」が適用できるケース
いったん算出した所得税(手順③で求めた額)から、さらに「税額控除」を差し引ける場合があります。所得控除は「所得」から差し引く一方で、税額控除は「所得税の金額」から直接差し引きます。
上図のように税額控除を差し引いて、残った金額が実際の納付額となるわけです。税額控除の代表的なものとしては「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」や「配当控除」が挙げられます。
所得控除 | 税額控除 | |
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差し引く対象 | 所得 | 所得税 |
具体例 |
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