確定申告とは、事業などで得た一年間の所得と、納めるべき税金の額を自己申告する手続きのことです。この申告をもとに適切な納税を行い、必要に応じて払いすぎた税金を受け取ります。
会社員の場合は、基本的に毎月の給与から税金が天引きされています。しかし、個人事業主の場合は自分で納税しなくてはならないため、基本的には確定申告が必須となります。
確定申告の概要
確定申告の主な目的は、納めるべき税金の金額を算出し、納税することです。一年間の収入から、課税の対象となる「課税所得」を明らかにした上で、それにかかる税金を計算します。
課税所得とは
一年間で得た収入のすべてがあなたの儲けになるわけではありません。収入から、収入を得るために使った「経費」を差し引いた金額が、あなたの儲け、すなわち「所得」となります。つまり、所得は以下のように求めます。
収入 ー 経費 = 所得
さらに、この所得から、納税者の公平性を保つ役割の「控除」を差し引いた金額が、課税の対象となる「課税所得」になります。
所得 ー 控除 = 課税所得
課税所得の求め方を図で表すと、以下のようなイメージです。
この課税所得に、条件に応じた税率をかけて納付する税額を算出します。こうして、税金を適切に納付することが、ひとまず確定申告のゴールだといえます。
納める税金の種類
個人事業主の場合、確定申告をもとに納める税金の種類は、主に以下の4つです。確定申告ができたら、順次納付していきましょう。
対象 | 納付期限 | 通知 | |
---|---|---|---|
所得税 | 課税所得のある全ての人 | 3月15日(確定申告の期限と同じ) | 無 |
消費税 | 前々年の課税売上が1000万円超の人など | 3月31日 | 無 |
住民税 | ほぼ全員(自治体の規定による) | 6月一括 or 分割(6,8,10,翌1月) | 有 |
個人事業税 | 前年の事業所得が290万円超のほぼ全ての人 | 8月一括 or 分割(8,11月) | 有 |
税金の種類によって納付期限が異なりますが、所得税や消費税の場合、納付通知などは届かないので注意が必要です。確定申告後に、自分から納付しましょう。その他の税金は、納付通知が届いてから、記載されている金額を納付すればOKです。
確定申告が義務づけられている人
個人事業主や給与所得者で、確定申告が義務づけられているのは、主に以下のような場合です。
- 個人事業主で、収入から必要経費を差し引いた所得が48万円を超える場合
- 給与所得者で、源泉徴収を受けていない、副業などの収入が20万円以上ある場合
上記に当てはまる人は、確定申告が義務となります。確定申告をしないと適切な納税ができず、「延滞税」や「無申告加算税」などのペナルティを課されてしまうので注意しましょう。
個人事業主の場合、上記の条件に当てはまらなくても、確定申告をすることで節税面のメリットを得られる可能性があります。そのため、所得が少ない場合でも、確定申告をしておくと良いでしょう。
確定申告をしたほうが良い場合
確定申告の義務がなくても、以下のようなケースは確定申告をしたほうが良いです。
- ケース1. 事業所得が赤字になった場合
- ケース2. 税金の還付がのぞめる場合
- ケース3. 融資の利用などで、所得の証明が必要な場合
ケース1. 事業所得が赤字になった場合
一年間の事業が赤字の場合、確定申告を行うことで、翌年以降の税金を少なくできる可能性があります。赤字を次の年に繰り越すことができるというわけです。
繰り越した赤字は、翌年以降の黒字額と相殺され、課税所得の額を減らすことができます。翌年以降の節税をねらうのであれば、たとえ赤字でも確定申告をしておきましょう。
ケース2. 税金の還付がのぞめる場合
一年間の所得が48万円以下だったとしても、確定申告をすることで、税金の還付を受けられることがあります。その主な例が、源泉徴収で支払った所得税の還付です。
個人事業主でも、受け取った報酬がすでに源泉徴収を受け、所得税を差し引かれている場合は多いです。そうして源泉徴収された金額が、年間の所得税を上回る場合は、確定申告を行うことで還付を受けることができます。
ケース3. 融資の利用などで、所得の証明が必要な場合
個人事業主の場合、確定申告を行わないと、公的に所得を証明できる書類が発行できません。副業をしている会社員の場合も、すべての所得を合わせて証明できるのは、確定申告後の発行書類のみです。
ローンの申込みや賃貸の契約の際には、所得証明書の提出が必要になります。確定申告をしないと、所得が証明できず、事業のための融資なども受けられなくなってしまうので注意しましょう。
確定申告の種類
個人事業主の確定申告には、大きく分けて「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。青色申告は「青色申告特別控除」の金額によって、さらに3種類に分かれるため、これら計4種類の中から申告方法を選びましょう。
確定申告の種類によって、帳簿の作り方や手続きの方法が変わります。それぞれの主な違いを以下の表にまとめました。
確定申告の種類とその特徴
白色申告 | 青色申告 | ||
---|---|---|---|
特別控除10万 | 特別控除55万円・65万 | ||
事前の申請 | 不要 | 必要 | |
記帳のしかた | 簡易簿記 | 簡易簿記 | 複式簿記 |
提出書類 | 確定申告書B 収支内訳書 |
確定申告書B 青色申告決算書 |
|
赤字の繰越し | 基本的にできない | できる | |
家族従業員への給与 | 一定額まで控除できる | 経費にできる |
白色申告とは
白色申告とは、青色申告と比べて簡易的な申告方法です。日々の帳簿づけや手続きが簡単なぶん、特別控除などの特典は付きません。青色申告の申請書を提出していない事業者は、自動的に白色申告を行うことになります。
白色申告のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
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青色申告の特典が受けられない (特別控除や赤字の繰越し、専業従事者給与など) |
白色申告にメリットはあるか?
白色申告の最大のメリットは、青色申告ほど帳簿づけが面倒でないという点です。日々の帳簿づけは、「簡易簿記」と呼ばれる家計簿のような方法で問題ありません。
しかし、事前に申請しておけば、特別控除10万円の青色申告も同様の簡易簿記で提出ができます。そのため、白色申告のメリットは非常に小さいというのが実情です。
青色申告とは
青色申告は、多くの節税メリットを得られる申告方法です。白色申告と比べると、帳簿づけや手続きは面倒ですが、そのぶん税金を大きく抑えられる可能性があります。個人事業主の方は、少し手間がかかっても青色申告を行うことをおすすめします。
青色申告の事前申し込み
青色申告を行うためには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しておく必要があります。青色申告の申込み期限は「開業から2ヶ月以内」、もしくは「青色申告を適応する年の3月15日まで」となっています。
青色申告のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
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青色申告のメリットについては、別の記事で詳しく説明しています。
確定申告の手順 5ステップ
確定申告は、大きく分けて以下の5ステップで完了します。
確定申告の5ステップ
ステップ1 | 確定申告書類を準備する | 税務署か国税庁HPで自分に必要な申告用紙を手に入れる |
---|---|---|
ステップ2 | その他の必要書類を準備する | 領収書や証明書、源泉徴収票などを準備する |
ステップ3 | 確定申告書を作成する | 会計ソフトなどを利用して、申告書を作成する |
ステップ4 | 確定申告書類を提出する | 期限内に税務署へ持参、郵送するか、ウェブで提出する |
ステップ5 | 税金の納税・還付 | 期限内に確定額を納税し、還付金がある場合は順次受け取る |
ステップ1. 確定申告書類を準備する
確定申告書は税務署か、国税庁のホームページから入手できます。AとBの2種類がありますが、個人事業主の場合は申告書Bを使用しましょう。加えて、白色申告の場合は「収支内訳書」が、青色申告の場合には「青色申告決算書」が必要になります。
ステップ2. その他の必要書類を準備する
確定申告書の内容によっては、いくつかの添付書類を必要とする場合があります。主な添付書類は、医療費控除のための領収書や、保険料控除のための証明書などです。
経費の領収書や源泉徴収票などは、基本的に添付不要です。しかし、これらは帳簿づけに不可欠な上、一定期間の保管が義務づけられているため、日頃から整理しておきましょう。保管期間は条件によって異なりますが、5年か7年のどちらかです。
ステップ3. 確定申告書を作成する
書類の準備ができたら、確定申告書を作成していきます。会計ソフトなどを利用すれば、こちらの作成は難しくありません。日頃から会計ソフトで帳簿づけを行っていれば、その内容が反映され、スムーズに申告書を作成することができます。
手書きで申告書を作成する場合は、収支内訳書や青色申告決算書をもとに、ひとつずつ記入していきます。
ステップ4. 確定申告書類を提出する
確定申告書が完成したら、添付書類や決算書類と合わせて提出します。基本的に提出先は、その時の住所がある地域を管轄する税務署です。提出期間は2月16日~3月15日ですが、土日祝日の関係で後ろ倒しになる場合もあります。
ステップ5. 税金を納付し、必要に応じて還付を受ける
確定申告書類の提出が完了したら、算出した税額を納付します。納付期限は、税金の種類によって異なり、とくに通知などが届かないものもあるので注意しましょう。納付期限を過ぎると、別途「延滞税」などが加算される場合があります。
所得税の還付が受けられる場合は、申告書で受け取り先の口座を指定しておけば、提出の約一ヶ月後に還付されます。