消耗品費とは
事業に関わる消耗品や備品の購入費用は、「消耗品費」の勘定科目で経費に計上しましょう。「消耗品費」に該当する費用について、国税庁は下記のように説明しています。
国税庁の示す具体例
- 帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費
- 使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費
上記の例示の他にも、下記のようなものの購入費用に「消耗品費」の科目が用いられます
消耗品費の一般例
事務用品 | 日用品 | 什器備品 | その他 |
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*購入代金が10万円未満であることを前提とする
なお「消耗品費」として計上するような出費の課税区分は、基本的に「課税」です。(消費税の納付義務がない免税事業者には関係ありません)
消耗品費の記帳例
たとえば、事業で使用するスマホを5万円で現金購入した場合、単式簿記では以下のように記帳します。
単式簿記の記帳例
日付 | 消耗品費 | 概要 |
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20XX年5月10日 | 50,000 | スマホ |
確定申告の際に、55万円・65万円の青色申告特別控除を狙うのであれば、以下のように複式簿記で記帳しましょう。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月10日 | 消耗品費 50,000 | 現金 50,000 | スマホ |
消耗品費の上限 – 減価償却費との違い
備品の購入費用でも、下記の両方に該当する場合は「消耗品費」として経費計上できません。原則として、減価償却という処理が必要になります。
減価償却の対象(原則)
- 購入費用(取得価額)が10万円以上のもの
- 使用可能期間が1年以上のもの
減価償却が必要な場合は、その購入費用を「減価償却費」として数年に渡って徐々に経費化していきます。たとえば、購入費用が5万円のパソコンと24万円のパソコンでは、以下のように処理方法が異なります。
5万円のパソコン | 24万円のパソコン | |
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減価償却 | 不要 | 必要 |
会計処理の方法 | 一括で経費にする (消耗品費で処理できる) |
4年に分けて経費にする (消耗品費で処理できない) |
減価償却をするものは「法定耐用年数」に従い、数年に渡って経費に計上します。パソコンの耐用年数は4年なので、1年あたり6万円(24万円 ÷ 4年)ずつ経費に計上します。
減価償却の例 – 24万円のパソコンを買った場合
※定額法を採用した場合
減価償却の留意点
- 青色申告者は、取得価額が30万円未満であれば一括で経費にできる
- 取得価額(≒ 購入費用)には本体価格のほか、送料や購入手数料なども含まれる
- セットで使用するもの(デスクと椅子など)はセットで取得価額を考える
- 取得価額は、基本的に税込みの金額で考える(税抜経理方式の場合を除く)
迷いがちな勘定科目 – 雑費
消耗品費と迷いやすい科目の1つとして「雑費」があります。雑費は、簡単に言うと「他の科目に当てはまらない経費」を指す科目です。たとえば、以下のような出費に使います。
雑費の具体例
- クレジットカードの年会費
- 銀行の振込手数料
- ごみ処理費用
- キャンセル手数料
- クリーニング代
少額な出費をなんでも「雑費」で処理し、雑費の合計額がふくらむのは、決算書の見え方として好ましくありません。税務調査のきっかけにならないよう、他の科目で計上できるものはきちんと分類しておきましょう。
消耗品費が膨らむ場合はどうする?
「消耗品費」は汎用性の高い科目です。こちらもうっかり合計金額がふくらみすぎないよう、必要に応じて別の科目を使いましょう。
別の科目で処理できる費用の例
通信費 | 広告宣伝費 | 荷造運賃 |
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上記の費用を消耗品費で計上することも可能です。ただ、記帳するたびに異なる科目を使うのはNGです。たとえば、いちど名刺を「広告宣伝費」として記帳すれば、その後も一貫して「広告宣伝費」で記帳しましょう(継続性の原則)。
まとめ
少額なものや、短期間で消費するものは基本的に「消耗品費」で経費計上できます。ただ、減価償却が必要な場合は会計処理が全く異なるので注意しましょう。
消耗品費で処理できる | 減価償却が必要 | |
---|---|---|
該当するもの | 取得価額が10万円未満 または 使用可能期間が1年未満 |
取得価額が10万円以上 かつ 使用可能期間が1年以上 |
会計処理の方法 | 購入年の経費にできる* | 数年に渡って経費化する |
*原則、年内に消費しなかったものは「貯蔵品」などの科目で資産計上する
青色申告者は、取得価額が30万円未満のものであれば、一括でその年の経費にできる特例を適用できます(年間300万円まで)。その場合は、減価償却をせずに「消耗品費」で処理すればOKです。
ちなみに、消耗品費と迷いがちな科目に「雑費」や「広告宣伝費」などがありますが、これらの使い分けについて決まったルールはありません。特定の科目の合計金額だけが膨らみすぎないよう、工夫して使い分けるようにしましょう。