目次
広告宣伝費とは?
広告宣伝費は、必要経費の勘定科目です。企業名や商品名を、不特定多数の人に向けて周知する際にかかる費用が該当します。
広告宣伝費の具体例
- ウェブ広告の費用
- SNS広告の費用
- 新聞、雑誌の広告掲載料
- 求人媒体の掲載料
- 自社ホームページの制作費
- チラシやカタログの制作費
- 看板などの制作費や設置費
広告宣伝費の課税区分は、基本的に「課税」です(看板の設置にかかる借地料などを除く)。この区分は、消費税の納付義務がない「免税事業者」には関係ありません。
仕訳例① 基本的な記帳方法
ここでは単式簿記と複式簿記を使って、仕訳の方法を説明しています。例えば、チラシの印刷費用3万円を現金で支払った場合、以下のように記帳します。
単式簿記の記帳例
日付 | 広告宣伝費 | 摘要 |
---|---|---|
20XX年8月18日 | 30,000 | チラシ印刷費用 |
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年8月18日 | 広告宣伝費 30,000 | 現金 30,000 | チラシ印刷費用 |
仕訳例② 料金を前払いしたとき – 雑誌の掲載費用
雑誌への広告掲載などを前払いで依頼する際は、原則として「費用を前払いしたとき」と「実際に広告が掲載されたとき」に記帳をします。例えば、雑誌の広告掲載費用として15万円を前払いする際は、以下のように処理しましょう。
1. 費用を前払いしたとき
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年12月10日 | 前払金 150,000 | 普通預金 150,000 | 雑誌広告 |
前払いした掲載料の全額を「前払金」に計上します。広告掲載の費用は、原則として実際に広告が掲載されるまで経費計上できないので、いったん「前払金」という資産に計上しておくのです。
続いて、実際に広告が掲載されたタイミングで、先ほどの「前払金」を「広告宣伝費」に振り替えます。この時点で初めて、前払いした掲載料を経費に計上できるわけです。
2. 実際に広告が掲載されたとき
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年1月20日 | 広告宣伝費 150,000 | 前払金 150,000 | 雑誌広告 |
なお、年内に必ず広告が掲載される場合は、前払いをしたタイミングで経費計上してしまってもOKです。これは「期中現金主義」という考えに基づいた処理方法です。
仕訳例③ 料金を後払いしたとき – ネット広告の配信費用
リスティング広告やSNS広告では後払いも多いです。このとき、基本的には下記のように「料金を支払った時点」で記帳するだけでOKです。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月20日 | 広告宣伝費 100,000 | 普通預金 100,000 | ネット広告掲載料 4月~5月掲載分 |
なお、この会計処理は期中現金主義の考え方によるものです。したがって、広告の配信期間が年をまたぐ場合などでは、同様の処理ができません。その場合は、次のように処理します。
【補足】ネット広告の配信期間が年をまたぐ場合
当年の経費に計上できるのは、基本的に「当年中にかかった費用」だけです。従って、広告の配信期間が年をまたぐ場合は、年末時点で料金がいくら生じているか確認する必要があります。
例えば、予算を5万円と設定したSNS広告について、年末時点でまだ3万円分しか配信されていなかったら、以下のように記帳します。(料金は5万円分の広告配信が終わった時点で引き落とされるものとする)
1. 年末時点での記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2021年12月31日 | 広告宣伝費 30,000 | 未払金 30,000 | SNS広告配信料 |
年末時点で、すでに3万円分の広告が配信されているので、その金額だけ「広告宣伝費」として経費に計上します。しかし、まだ料金は支払っていないので、貸方は「未払金」(負債の勘定科目)としておきます。
2. 翌年に料金を支払ったときの記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2022年1月20日 | 広告宣伝費 20,000 | 普通預金 50,000 | SNS広告配信料 |
未払金 30,000 |
実際に料金を支払った時点で、残りの2万円を経費に計上します。このとき、年末に計上した「未払金」の消し込みも行います。
他の勘定科目と迷うケース
帳簿づけをしていると、「どの勘定科目で記帳すればいいか分からない…」という費用も出てきます。例えば以下のような取引は、該当する勘定科目がいくつかあります。
取引の具体例 | 該当する勘定科目の例 |
---|---|
ホームページの制作費 |
|
取引先を観劇に招待した際のチケット代 |
|
宣伝のために購入した看板の費用 |
|
求人広告を出した際の費用 |
|
なお「販売促進費」という、似た勘定科目を設けている会計ソフトもあります。「広告宣伝費」と「販売促進費」は、一般的に以下のように使い分けられています。
- 広告宣伝費……企業名や商品名をPRするために使った費用
- 販売促進費……商品やサービスの売上増加のために使った費用
とはいえ個人事業主の場合、それぞれの勘定科目を、そこまで厳密に区別する必要はありません。継続性の原則を守り、使用する勘定科目に一貫性を持たせていればOKです。
勘定科目の使い分けのポイント – 青色申告の必要経費をおさらい
まとめ – 重要ポイント
- 「広告宣伝費」は必要経費の勘定科目
- 企業や商品の名称を、不特定多数に向けて宣伝する際の費用が当てはまる
- 大抵の支払いは、消費税の課税対象となる
- 広告の掲載料は「実際に掲載されたとき」に経費計上するのが原則
- 前払いをした年内に広告が掲載される場合、前払いをした時点で経費に計上してもよい
経費に計上できるのは「当年中の広告掲載にかかった費用」だけです。そのため、広告掲載期間の途中で年をまたぐ場合などは、決算時に「当年分の費用」と「翌年分の費用」を区別する処理が必要になります。
もちろん、すべて「当年分の費用」であれば、支払った日付の記帳だけでOKです(期中現金主義)。