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白色申告のメリット・デメリット – 青色申告との比較

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2021/04/09

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白色申告のメリット・デメリット

確定申告の方法には、大きく分けて「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。本記事では、白色申告のメリット・デメリットについて、青色申告と比較しながら紹介しています。

白色申告のメリット・デメリット

青色申告と比較した場合の、白色申告のメリット・デメリットは以下の通りです。白色申告のデメリットは、青色申告で受けられる節税特典がないことです。

メリット デメリット
青色申告よりも簡単

  • 税務署への事前申請が不要
  • 帳簿づけが簡単
  • 決算書の記入項目が少ない
節税につながる特典がない

  • 青色申告特別控除が適用できない
  • 青色のように赤字繰越できない
  • 少額減価償却資産の特例が利用できない
  • 専従者控除の金額に上限がある
  • 貸倒引当金の繰入れを一括評価できない

メリット① 税務署への事前申請が不要

白色申告 青色申告
事前申請不要 「青色申告承認申請書」を事前に提出*

*一度提出するだけでよい

白色申告で確定申告をする場合、事前申請は不要です。一方で、青色申告で確定申告をするには、事前に税務署へ申請書を提出し、青色申告での申告を認められる必要があります。その手続を完了していない人は、自動的に白色申告になります。

青色申告をするとき 事前申請書の提出期限

メリット② 帳簿づけが簡単

白色申告 青色申告
以下の記帳方法が認められている(併用可能)

  • 「簡易簿記」
  • 「簡易な方法による記載」
以下のように記帳方法が分かれる

  • 「簡易簿記」(10万円控除の場合)
  • 「複式簿記」(55&65万円控除の場合)

白色申告では、簡易簿記という記帳方法で帳簿づけをします。さらに、白色申告者は、簡易な方法による記載も認められています。この2つを掛け合わせることで、ラクに帳簿づけを済ませることができます。

白色申告の帳簿づけ – 原則的な記帳方法と簡易的な記帳方法

ただし青色申告の10万円控除においても、簡易簿記での帳簿づけは認められています。また、クラウド会計ソフトを使えば、初心者でも簡単に、複式簿記で帳簿づけが可能です。白色申告と青色申告における、帳簿づけの難易度の差は、それほど大きくはありません。

用語解説

簡易簿記
(単式簿記)
家計簿やお小遣い帳のような記帳方法
簡易な方法による記載 細かな記載を省略できる方法(白色申告者のみ)
例 : 少額な現金売上は、日々の合計金額をまとめて記載してよい
複式簿記 取引の両面(原因と結果)を記録する記帳方法

簡易簿記(単式簿記)と複式簿記の違い

メリット③ 決算書の記入項目が少ない

白色申告 青色申告
収支内訳書(決算書)

  • 全2ページ構成
青色申告決算書

  • 全4ページ構成
  • 55万円&65万円控除を利用する人は4ページ目(貸借対照表)も記入

白色申告者は「収支内訳書」という決算書を作成して、確定申告で提出します。収支内訳書は全2ページで構成されており、青色申告者が作成する決算書(青色申告決算書)よりも、記入項目が少ないです。

一方、青色申告で55万円・65万円の控除を受けるには、全4ページの決算書を作成する必要があります。ただ、クラウド会計ソフトを使えば、決算書は簡単に作成できます。クラウド会計ソフトでは、日々の取引を記録していれば、決算書のほとんどは自動的に作成されます。

用語解説

決算 個人事業主においては、帳簿をもとに以下の書類(決算書)を作成すること
・収支内訳書(白色申告の場合)
・青色申告決算書(青色申告の場合)
決算とは – 確定申告の3つのステップ
貸借対照表 ・決算書の一種で、決算時の財政状態を示すもの
・青色申告決算書の4ページ目にある
・55万円&65万円控除の場合のみ、作成が義務づけられている

デメリット① 青色申告特別控除が適用できない

白色申告 青色申告
特別控除がない 10万円 or 55万円 or 65万円の特別控除

白色申告に特別控除はありません。これが、青色申告に劣る大きなデメリットです。青色申告の場合、クリアする要件に応じて上表の特別控除が適用できます。

青色申告特別控除とは?

青色申告特別控除は、下図のとおり差し引かれるものです。

所得税の計算方法

このように、青色申告特別控除を差し引いた金額に、税率を掛け、所得税を求めます。そのため、収入が高ければ高いほど、節税額は大きくなっていきます。下記の記事では、ざっくりと節税額を比べています。

【所得300万円】税額比較 – 白色申告と青色申告(65万円控除)
【所得500万円】税額比較 – 白色申告と青色申告(65万円控除)

用語解説

控除 ある金額から一定の金額を差し引くこと(主に所得控除や特別控除が該当)
以下のように、控除が多いほど、節税に繋がる
所得税の算出 – 控除が多い場合と少ない場合の比較

デメリット② 青色のように赤字繰越できない

白色申告 青色申告
ごく一部のみ繰越可能 事業で生じた赤字額を、翌年以降に繰越すことができる*(最大3年間)

*前年に赤字を繰戻すことで、払いすぎた税金を受け取ることも可能

白色申告では、基本的に赤字の繰越しができません。例外的に、以下の場合の赤字・損失は繰越しができますが、該当者はそれほど多くありません。

  • その年ごとに変動が大きい所得(印税や原稿料、作曲料など)における損失
  • 災害による事業用資産の損失

青色申告における赤字の繰越しは、事業で生じた赤字の金額を、翌年以降3年間に渡って、各年の黒字所得から差し引くことができる、というものです。以下の例では、1~3年目は「所得税を納付しなくてよい」ということになります。

赤字の繰越し方法

デメリット③ 少額減価償却資産の特例が利用できない

白色申告 青色申告
少額減価償却資産の特例が利用できない
→10万円以上のものは減価償却をする
少額減価償却資産の特例が利用できる
→10万円以上30万円未満のものは一括で経費に計上できる*

*年間で合計300万円まで

「少額減価償却資産の特例」は、ざっくり言うと「10万円以上30万円未満のものを買ったときの費用は、全額をまとめてその年の経費にしてよい」というものです。

白色申告では、この特例を利用できません。そのため、取得価額が10万円以上の減価償却資産を取得したら、「減価償却」をすることになります。

一方、青色申告であれば「少額減価償却資産の特例」が適用できます(2022年3月31日まで)。この特例を利用すれば、取得価額30万円未満のものであれば、一括でその年の経費に計上することが可能です。

用語解説

取得価額 品物購入から実際に使い始めるまでに直接かかった費用の合計額
品物の代金・購入手数料・送料・関税などを含めた金額
減価償却資産 高価な事業用資産のうち、時の経過によって価値が下がっていくもの
パソコン・カメラ・建物・空調設備・自動車など
減価償却 帳簿の上で減価償却資産の資産価値を減らし、経費計上すること
例:高価なパソコンを購入したとき
→まずは資産に計上し、指定年数の4年で少しずつ経費にしていく

デメリット④ 専従者控除の金額に上限がある

白色申告 青色申告
・「専従者」がいれば「事業専従者控除」を利用できる
・控除額に上限あり
・「専従者」へ支払った給与が「必要経費」に計上できる
・全額を経費に計上できる*

*支払給与額が妥当であると認められる場合

白色申告では、事業専従者がいれば、「事業専従者控除」という控除を利用することができます。ただし、控除額の上限は以下のように定められています。

  • 事業専従者が配偶者(妻や夫)の場合…………最高86万円まで
  • 事業専従者が配偶者以外の場合………………最高50万円まで

青色申告では、事業専従者控除は利用できません。しかし、事業専従者へ支払った給与の全額を、必要経費に計上することができます。

事業専従者の扱い – 白色申告と青色申告

用語解説

事業専従者 以下の3つの条件全てを満たす人のことを指す

  • 生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • その年の12月31日時点で15歳以上であること
  • 1年間で6ヶ月以上*、その事業を本業とし、専念していること

*場合によっては、事業に従事できる期間の2分の1を超えていればよい(青色申告のみ)

デメリット⑤ 貸倒引当金の繰入れ

白色申告 青色申告
  • 一括評価による貸倒引当金の繰入れができない
  • 個別評価のみ適用可能
  • 一括評価による貸倒引当金の繰入れができる
  • 個別評価でもOK

白色申告では、一括評価によって貸倒引当金の繰入れをすることができません。ただし、個別評価で貸倒引当金の繰入れをすることは認められています。

用語解説

貸倒引当金 取引先から回収できなくなりそうな債権(売掛金や未収金など)の一部のこと。これを必要経費に計上できる
貸倒引当金の繰入れ ・貸倒引当金を計上すること
・計上した金額は「貸倒引当金繰入」と呼ばれる
個別評価 「貸倒引当金」の金額を決める評価方法の1つ
繰入れの要件は厳しいが、繰入れできる金額が多い
一括評価 「貸倒引当金」の金額を決める評価方法の1つ
繰入れの要件はゆるいが、繰入れできる金額が少ない

まとめ

白色申告 青色申告
10万円控除 55万円控除
65万円控除
事前申請 不要 必要 必要
帳簿づけ 簡単 簡単 難しい
決算書 収支内訳書 青色申告決算書
(貸借対照表は不要)
青色申告決算書
事業専従者給与 控除できる金額に
上限あり
全額を経費に
算入できる*
全額を経費に
算入できる*
赤字の繰越し ごく一部のみ
利用可能
翌年以降3年間
利用可能
翌年以降3年間
利用可能

*「労務の対価として相当であると認められる金額」との定めあり

白色申告は帳簿づけから確定申告まで、簡単に終えることができます。しかし、これまで示してきたとおり、青色申告で認められるような節税特典はありません。

「わざわざ青色申告の申請を出すのが面倒」「所得がそれほど高くなく、節税できる金額が少ない」という人には、白色申告が適当でしょう。

ただ、クラウド会計ソフトによって青色申告の帳簿づけ・申告書類作成のハードルは下がっていますから、会計ソフトの利用予定がある方は青色申告を検討してみて下さい。

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